中国語の音声を日本語に翻訳する方法は、大きく2つに分かれます。ひとつは、目の前の相手とその場で会話を訳したい場合。もうひとつは、すでにある録音・動画・会議の中国語音声を、あとから読める日本語のテキストや字幕に変えたい場合です。前者はGoogle翻訳やVoiceTraのような無料の会話翻訳アプリが向いていて、後者は文字起こしと翻訳を分けて処理するツールのほうが、話し言葉のニュアンスを残したまま仕上がります。
この記事では両方を整理したうえで、特に後者(録音・動画・会議の中国語音声を翻訳する場合)を中心に、ニュアンスを消さずに訳すコツとおすすめツールをまとめます。なお、私は本文で紹介するサービスのひとつSubananaを運営しています。Subananaが向かない用途もはっきり書くので、判断材料にしてください。

中国語の音声翻訳、まず「会話」か「録音・動画」かを分ける
同じ「中国語の音声を翻訳したい」でも、必要な道具はまったく違います。
| その場の会話翻訳 | 録音・動画・会議の音声翻訳 | |
|---|---|---|
| いつ訳す | 話しながら即座に | 録音・撮影のあと |
| 出力 | 音声または画面の即時翻訳 | 読めるテキスト・字幕ファイル・文書 |
| 向いている場面 | 旅行、対面の雑談、接客 | 商談の議事録、インタビュー、YouTube動画、講義 |
| 代表的な手段 | 会話翻訳アプリ | 文字起こし+翻訳サービス |
| あとからの修正 | ほぼできない(一発勝負) | 何度でも見直せる |
会話翻訳は速さが命な代わりに、訳し直しがききません。録音・動画の音声翻訳は逆に、時間をかけて正確さと自然さを詰められます。どちらを求めているかで、選ぶべきツールの種類が変わります。
中国語の「話し言葉のニュアンス」が翻訳で消えやすい理由
中国語の話し言葉には、書き言葉にはない要素が多く含まれます。「呃」「那个」のような言いよどみ、語尾の「啊」「呢」「吧」のようなニュアンスを添える助詞、商談中に英単語や現地の言い回しが混ざるコードスイッチングなどです。
その場で音声から音声(または音声からテキスト)へ即座に訳すタイプのアプリは、速さを優先するぶん、こうした細かいニュアンスを翻訳の過程で丸めてしまいがちです。話者が実際に言った通りではなく、意味が通る「それらしい訳文」に寄せられることがある、という点は知っておくと役立ちます。
これに対して、いったん中国語のまま文字起こしをしてから日本語に翻訳する二段階の処理は、話者が実際に何を言ったかをテキストとして残したうえで翻訳するため、あとから訳文を見直して、ニュアンスが訳し漏れていないか確認・修正できます。録音・動画の音声を翻訳するときは、この二段階の処理ができるツールを選ぶのが、ニュアンスを保つ一番の近道です。
その場で中国語の会話を訳したいなら(無料アプリ)
目の前の相手と、いま話しながら訳したい場合は、会話翻訳に特化した無料アプリが素直な選択です。
- Google翻訳の会話モード:双方の言語を設定してマイクで話すと、リアルタイムで双方向に翻訳してくれます。中国語を含む主要言語に対応していて、無料です。会話モードの具体的な使い方はGoogle翻訳で音声を翻訳する方法にまとめています。
- VoiceTra(ボイストラ):国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が無料で提供する音声翻訳アプリです。中国語(簡体字・繁体字を含む)を含む33言語に対応しています(App Store掲載情報より)。
どちらも「その場で手早く伝わればいい」用途には向いていますが、あとから文書として見直したり、複数人の発言を分けて記録したりする用途には向きません。それは次のセクションの仕事です。
録音・動画・会議の中国語音声を翻訳したいなら?
すでにある録音・動画・会議の中国語音声を、読める日本語のテキストや字幕にしたい場合は、いきなり音声を翻訳するのではなく、まず中国語で文字起こしをし、その結果を日本語に翻訳するという二段構えが基本になります。流れはシンプルです。
- 音声・動画をアップロードする(またはURLから取り込む)。
- ソース言語(中国語)を指定する。
- 翻訳先の言語(日本語)を指定する。
- 文字起こしと翻訳が走り、テキスト・字幕として書き出す。
このとき、固有名詞や社名・専門用語をあらかじめ登録できるか、話者ごとに発言を分けられるか(話者分離)、原文と訳文を並べて見直せるかが、ニュアンスを保てるかどうかを左右します。次のセクションで、代表的なツールを比較します。
おすすめツール比較|NottaとSubanana
録音・動画・会議の中国語音声を翻訳できる代表的なツールを2つ、正直に比較します。
| Notta | Subanana | |
|---|---|---|
| 得意な使い方 | 会議に参加しながらのリアルタイム文字起こし・翻訳 | 録音・動画ファイルをアップロードしての文字起こし+翻訳 |
| 会議ボットの自動参加 | Zoom・Google Meet・Microsoft Teams・Webexに対応(Notta公式) | Google Meet・Microsoft Teams(Zoomはブラウザ拡張機能で録音可能) |
| リアルタイム翻訳 | 会議中にライブで翻訳可能(Notta公式) | 会議ボットは録画後の処理向け。イベント向けのライブ字幕は別機能 |
| 無料プランでの翻訳 | 翻訳機能なし(Notta公式、無料プランは月120分・1回3分まで) | 有料プラン内であれば文字起こしと同じ分数で翻訳を利用可能(追加課金なし) |
| 対応言語の翻訳先 | 有料プランで対訳表示に対応 | 字幕モードは1回のジョブで複数の翻訳先を同時出力可能 |

Nottaは、Zoom・Google Meet・Microsoft Teams・Webexに自動参加するボットを持ち、会議の最中にリアルタイムで文字起こしと翻訳を確認できるのが強みです(Notta公式サイトより)。中国語での商談をその場で追いかけたい人には、この即時性がはっきりしたメリットになります。一方、無料プランは月120分・1回3分までの文字起こしのみで、翻訳機能自体は有料のProプラン以上(年払い換算で月8.17米ドルから、Notta公式サイトより)でしか使えません。
Subananaは会議中のリアルタイム表示は持たず、録音・動画ファイルをアップロード(またはYouTube・Instagram・Facebookの公開URLを取り込み)して、あとから文字起こしと翻訳をまとめて仕上げる設計です。中国語を含む95以上の言語に対応し、言語ごとにベンチマークで最良の音声認識モデルを選ぶ設計になっています。有料プランであれば、翻訳は文字起こしと同じ分数の中で追加課金なく使えます。字幕モードでは1回のジョブで複数の翻訳先言語を一度に出力でき、話者分離にも対応しています。
つまり、「中国語の会議をリアルタイムで追いたい」ならNottaの即時性が向いています。「録音・動画をあとからじっくり日本語に仕上げたい、原文と訳文を見比べて確認したい」ならSubananaの二段階処理が向いています。
中国語の音声を翻訳するとき、ニュアンスを保つための3つのコツ
- 固有名詞・専門用語を先に登録する。 人名・社名・業界用語は誤変換や訳し漏れの常連です。Subananaでは用語集(ワークスペース単位・プロジェクト単位、XLSX/CSVでの一括登録も可能)に事前登録しておくと、翻訳結果のブレを減らせます。
- 話者ごとに発言を分ける。 会議やインタビューでは話者分離が効きます。誰の発言かを分けてから翻訳すれば、あとから「これ誰の発言だっけ」と巻き戻す手間が減り、ニュアンスの取り違えにも気づきやすくなります。
- 原文と訳文を並べて見直す。 Subananaは原文(中国語)と訳文(日本語)を1つのSRTファイルにまとめた対訳(バイリンガル)字幕を書き出せます。訳文だけでなく原文も並べておくと、ニュアンスが訳し漏れていないかをあとから確認しやすくなります。
Subananaで中国語の音声を日本語に翻訳する手順
参考までに、Web完結型の一例としてSubananaでの手順を紹介します。
- AI議事録ツールから、中国語の音声・動画ファイルをアップロードします。YouTube・Instagram・Facebookの公開URLからも取り込めます。
- ソース言語として中国語を指定します。自動判定に任せると、英単語が混じる商談などで誤判定が起きやすいため、最初に指定するのがおすすめです。
- 翻訳先の言語として日本語を指定します。字幕モードなら複数の翻訳先を同時に、逐字稿・会議モードなら1言語を指定します。
- 固有名詞や専門用語があれば、用語集に登録しておきます。
- 文字起こしと翻訳が走ります。逐字稿・会議モードでは句読点・段落の整形と話者識別も自動で行われます。
- SRT・VTT・TXT・DOCX・XLSX・Markdownなどの形式で書き出します。原文と訳文をまとめた対訳字幕も選べます。
処理時間の目安として、1時間の会議録音であれば処理の中央値は5分弱です。長い録音でも、待ち時間が結果の確認を妨げにくい設計になっています。
料金の目安
無料プランは結果を確認するためのプレビュー中心で、生成は各ファイルの先頭15分まで、書き出しは透かし入りの動画のみです。字幕・文書としての書き出しは有料プランで解放されます。年払い換算でLiteが月9米ドルから、Proが月18米ドルから、Maxが月50米ドルからで(料金ページより)、詳細は料金ページで確認できます。ファイルサイズ・長さの上限は30GB/8時間まで全プラン共通です。
よくある質問
中国語の音声翻訳アプリで無料のものは?
その場の会話を訳したいだけなら、Google翻訳の会話モードやVoiceTraが無料で使えます。どちらも中国語に対応しています。ただし、これらは録音済みの音声ファイルをアップロードして翻訳する用途には向いていません。録音・動画の音声をまとめて翻訳したい場合は、文字起こし+翻訳型のツールを使うほうが確実です。
中国語の音声を日本語に翻訳するにはどうすればいいですか?
目的によって手順が変わります。目の前の相手との会話をその場で訳したいなら、Google翻訳の会話モードやVoiceTraのような無料アプリで足ります。すでにある録音・動画・会議の音声を翻訳したいなら、まず中国語で文字起こしをし、その結果を日本語に翻訳する二段階の処理が基本です。Subananaのようなツールなら、音声・動画をアップロードしてソース言語(中国語)と翻訳先(日本語)を指定するだけで、この二段階を一度に処理できます。
音声翻訳のやり方は?
「音声翻訳」という言葉自体が、リアルタイムの会話翻訳と、録音済みの音声をテキストに翻訳する作業の2つを指すことがあります。両者のやり方の違いは音声翻訳とは?録音・会議・動画の音声を翻訳する方法とツールの選び方で詳しく整理しています。
Google翻訳で中国語の音声入力はできますか?
はい、できます。Google翻訳の会話モードは、双方の言語を設定してマイクで話しかけると、中国語を含む主要言語をリアルタイムで翻訳します。ただし、これは対面の会話向けの機能で、すでに録音した音声ファイルをアップロードして翻訳する機能ではありません。録音・動画の中国語音声をまとめて翻訳したい場合は、文字起こし+翻訳型のツールを使ってください。
中国語の音声翻訳は、「その場の会話」と「録音・動画・会議」で必要な道具がまったく違います。前者は無料の会話翻訳アプリで十分なことが多く、後者は文字起こしと翻訳を分けて処理するツールのほうが、話し言葉のニュアンスを保ったまま、あとから見直せる形に仕上がります。録音・動画の中国語音声をきれいに日本語へ翻訳したいなら、Subananaの無料プランで一度試してみてください。