日本語のポッドキャストで文字起こしが出ないのは、番組の作り方が悪いからではありません。Apple Podcastの自動文字起こしが対応しているのは英語、デンマーク語、オランダ語、フィンランド語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ノルウェー語、ポルトガル語、スペイン語、スウェーデン語で、Spotifyの自動生成も「一部の番組」に限られます。日本語で配信しているなら、文字起こしは自分で作ってショーノートに載せるのが現実的な道です。
この記事は前半をリスナー向けに使います。どこをタップすれば文字起こしが出るのか、出ないときは何が起きているのか。ここは短く終わらせます。後半は配信者向けで、ショーノートと検索流入に使える原稿を作る手順を5ステップにまとめました。出典はAppleとSpotifyの公式ヘルプで、いずれも2026年8月11日に確認しています。筆者は文字起こしツールのSubananaを運営しているので、後半の手順は自社の画面で書きます。できることとできないことの線引きも、同じ精度で書きます。

リスナー向け:文字起こしを表示する手順
Apple Podcastの操作は、Appleのユーザガイド「iPhoneでポッドキャストの文字起こしを表示する」に載っています。
- エピソード情報を表示しているときは、「文字起こし」セクションまで下にスクロールする。その他ボタンから「文字起こしを表示」をタップする方法もあります
- 「再生中」画面からは、文字起こしの表示ボタンをタップする。先にミニプレーヤーをタップして「再生中」画面を開く必要がある場合があります
- フルスクリーンのビデオモードで視聴している間は文字起こしを使えません。その代わりにキャプションボタンで字幕を出せます(利用可能な場合)
文字起こしを開いたあとは、段落をタップしてその位置から再生したり、上にスワイプして「検索」でエピソード内の語句を探したりできます。
同じページには注記がひとつ付いています。「文字起こしの提供状況は、言語と国や地域によって異なります」。この一文が、日本語番組で文字起こしが出ない理由のほぼすべてです。
Spotifyは、公式ヘルプ「Spotifyでエピソードの文字起こしを管理する」が「一部の番組では、エピソードの文字起こしが自動生成されます」と書いています。リスナーはSpotifyモバイルアプリの再生中ビューかエピソードページで確認します。配信者側はエピソード単位でも番組単位でも表示をオフにできるので、番組によって出たり出なかったりするのは仕様どおりです。
つまり、どちらのアプリでも、文字起こしが出るかどうかは番組側に用意があるかで決まります。表示のオンとオフを握っているのも配信者です。ここから先は、その用意をする側の話になります。
日本語番組は、なぜ自分で用意することになるのか
Apple Podcast for Creatorsの「Apple Podcastにおける文字起こし」には、利用可能条件がはっきり書いてあります。文字起こしはiOS 17.4以降で使え、英語、デンマーク語、オランダ語、フィンランド語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ノルウェー語、ポルトガル語、スペイン語、スウェーデン語に対応し、170を超える国と地域で利用できる。自分で用意した文字起こしをAppleが受け付ける言語も、同じ11言語です。
そのうえでAppleは、ベストプラクティスとしてこう案内しています。番組の言語にApple Podcastが対応していない場合は、番組の説明に含まれるリンクを使って、文字起こしをリスナーに届けられるようにする。プラットフォームの外に全文を置き、そこへリンクを張れ、というのがApple自身の推奨です。
これは配信者にとって悪い話ばかりではありません。自分のサイトに置いた全文は、番組ページと違って検索エンジンが本文として読めます。ゲストの名前、扱った製品名、話題になった書名が本文にある状態を作れば、エピソードは「聴くもの」から「検索で見つかるもの」に変わります。以下の5ステップは、その原稿を作る手順です。
1. エピソードの音声ファイルをそのままアップロードする
配信面のURLを貼るのではなく、収録したマスター音源をアップロードします。SubananaがURLから取り込めるのは、公開されているYouTube、Instagram、Facebookのリンクです。ポッドキャストの音源は手元にあるので、ファイルを上げるほうが速く、音質も落ちません。
- 対応する音声ファイルはmp3、m4a、wav、ogg、aac、flac、opusなど。動画ファイルもそのまま扱えます
- 1ファイルあたり30GB・8時間まで。これは無料プランを含む全プラン共通で、容量や長さでプランが分かれてはいません
- 処理時間の実測中央値は、1時間の会議音声で4.9分(2026年7月の計測)
長尺の特番を出している番組は、Appleの注意書きも見ておいてください。10時間を超えるエピソードは、文字起こし機能を利用できない場合があるとされています。
音源を1本置いて出力を確かめるだけなら、AI文字起こしツールのページからそのまま試せます。
2. 話者数を指定して、話者ラベルを付ける
逐語稿モードは話者識別つきで出力します。話者の数は自動でも手動でも指定できます。ゲスト回のように人数が分かっているときは、先に人数を入れておくほうが結果が安定します。
配信者にとって話者ラベルが効くのは、プラットフォーム側がそれを表示に使うからです。Appleは、VTTファイルを提供すれば文字起こしの各行の話し手をすべて明示でき、話し手が変わるたびにApple Podcastの表示画面にその名前が出る、と説明しています。ホストとゲストが交互に話す番組では、ラベルの有無がそのまま読みやすさになります。
話者分離そのものの仕組みと、精度が落ちる収録条件については話者分離できる文字起こしとは?に書いたので、ここでは繰り返しません。ポッドキャスト側で効くコツをひとつだけ挙げると、リモート収録は各自のローカル録音を別トラックで受け取り、話者ごとに分けたまま扱うほうが、混ざった1本より後工程が楽になります。
3. ゲスト名と固有名詞を、収録前に用語集へ入れておく
毎回同じ固有名詞が同じように化ける、というのがポッドキャストの文字起こしで一番よくある不満です。番組名、コーナー名、レギュラー出演者、扱っているジャンルの専門用語。これらは音としては珍しく、モデルが一般語に寄せてしまいます。
Subananaの用語集は2階層です。ワークスペースの用語集はすべてのプロジェクトに効き、カスタムの用語集はプロジェクト単位で付けます。番組共通の語はワークスペース側に、その回だけのゲスト名や書名、製品名はプロジェクト側に置く、という分け方が回しやすいはずです。登録は1件ずつ入れても、まとめて貼り付けても、XLSXやCSVで一括インポートしてもかまいません。各用語には、どの言語でも同じ表記になるユニバーサルか、言語ごとに表記を分けるかの指定が付きます。日英が混ざる回では、この言語別の指定が効きます。
登録は手動です。編集した内容から用語を推測して足してくれるわけではないので、告知文や台本からゲスト名をコピーしておく、という前作業が要ります。ただしこれは一度きりの作業ではなく、回を重ねるほどリストが育って、直す量が減っていきます。
用語集そのものは文字起こしツールに広く載っている機能なので、選ぶときは有無ではなく粒度を見てください。ワークスペース単位とプロジェクト単位を分けられるか、言語ごとに表記を指定できるか、一括インポートがあるか。この3つで運用の手間がだいぶ変わります。
固有名詞の対策は、番組ページ側にもうひとつあります。Appleは、ホストとゲストの名前を番組およびエピソードの説明に含めておくと、文字起こしの中でその名前が正しく表記される、とベストプラクティスに挙げています。用語集と番組説明、両方に入れておくのが安全です。

4. 読める日本語に整える
逐語稿モードでは、句読点と段落の復元が常時オンになっています。切り替えのスイッチはありません。字幕モードには適用されない処理で、これは意図的です。字幕は句読点を打たないのが慣例だからです。ポッドキャストの原稿は読むためのものなので、こちらが効く側になります。
エディタには、聞き間違いや同音異義語のような取り違えの候補を出すLLMの補正が入っています。動き方は提案と確認で、勝手に書き換わることはありません。1件ずつ採用か却下かを選びます。逆に言えば、音声にあったのに落ちてしまった語を補う用途では使えません。落ちた語に気づけるのは音を聞いている人だけなので、そこは通しで一度聞く時間を取ってください。
引用に耐える逐語記録の作り方そのもの、たとえばフィラーをどこまで残すかという判断はインタビューの文字起こしにまとめてあります。番組で使うのが要約寄りの整文か、発言どおりの逐語かは、そちらを読んで決めるほうが早いはずです。
5. 配信面とショーノートの両方に置く
出力の置き先はふたつあります。プラットフォームに提出する字幕ファイルと、Webページに載せる本文です。要件が違うので、分けて考えます。
| Apple Podcast | Spotify | |
|---|---|---|
| 自動生成 | エピソード公開後に自動で作成 | 一部の番組のみ |
| 自作の提出経路 | RSSの文字起こし用タグ/サブスクリプション登録者向けはApple Podcast Connectでアップロード | Spotify for Creatorsでアップロード |
| ファイル形式 | VTTまたはSRT | VTTまたはSRT、5MB以下、タイムスタンプ必須 |
| 編集の流れ | Connectでダウンロードして修正し、RSSで再提出 | ダウンロードして修正し、再アップロード |

Spotify側の注意点をヘルプから拾っておきます。Spotify for Creators上で文字起こしを直接編集することはできない仕様なので、直すときは必ずダウンロードして、手元で編集して、上書きしたファイルを再アップロードします。アップロードするファイルはVTTまたはSRT形式で、上限は5MB、タイムスタンプを含めないと再生時に同期されません。そして自分でアップロードしている番組で自動生成をオンにすると、アップロード済みの文字起こしは置き換えられます。設定から文字起こしを開いて「RSS経由でその他のプラットフォームにも文字起こしを配信する」をオンにすると、ほかのリスニングプラットフォームにも届きますが、対応していないプラットフォームもあるとヘルプは注記しています。
Apple側は、自分で用意した文字起こしをRSSフィードの文字起こし用タグ経由で取り込みます。ホスティングプロバイダーが文字起こしに対応しているかを先に確認してください。サブスクリプション登録者向けのエピソードは、Apple Podcast ConnectでVTTまたはSRTを直接アップロードできます。ただし受け付ける言語は前述の11言語で、品質基準を満たさないファイルは表示されません。
Webページに載せる本文は、字幕ファイルとは別に書き出します。Subananaの書き出しはSRT、VTT、TXT、DOCX、XLSX、Markdownの6形式で、6つまとめたZIPもあります。配信面にはVTTかSRT、記事の本文にはMarkdownかTXT、というのが素直な組み合わせです。
ショーノートからその本文へリンクを張ります。Spotifyのヘルプによると、Spotifyでホスティングしている番組はリッチテキストエディターで、ほかのプラットフォームでホスティングしている番組はRSSフィードのタグで、リンク、見出し、箇条書き、番号付きリスト、段落、改行を指定できます。リンクはhttpsのみ対応で、httpは使えません。
海外のリスナーがいる番組なら、翻訳版も1本置けます。逐語稿モードは翻訳先の言語をひとつ指定でき、対応言語は95以上です。Spotify側にも、一部の番組で翻訳された文字起こしを利用できる機能があります。
なお、Subananaの無料プランは各ファイルの最初の15分だけを生成するプレビュー用で、字幕や逐語稿のファイルを書き出すことはできません(書き出せるのは透かし入りの動画だけです)。出力の質を見るには十分ですが、ショーノートに載せる原稿を作る段階では有料プランが要ります。料金はプラン一覧にあります。
よくある質問
ポッドキャストの文字化はできますか?
できます。方法は2通りあって、ひとつはプラットフォームの自動生成に任せる方法、もうひとつは自分で文字起こしを作って提出する方法です。Appleの自動生成の対応言語に日本語が入っていないぶん、日本語番組は後者に寄ることになります。Apple Podcastが自動生成に対応しているのは英語、デンマーク語、オランダ語、フィンランド語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ノルウェー語、ポルトガル語、スペイン語、スウェーデン語で、Spotifyの自動生成は一部の番組に限られます。
Spotifyでポッドキャストの文字起こしを表示するには?
Spotifyのヘルプによると、文字起こしが用意されている番組では、Spotifyモバイルアプリの再生中ビューかエピソードページで確認できます。表示されない番組は、そもそも自動生成の対象になっていないか、配信者がエピソード単位または番組単位で表示をオフにしています。表示のオンとオフはSpotify for Creators側の設定なので、そこは番組に依頼する形になります。
ポッドキャストの文字起こしがされないのはなぜですか?
多い順に3つあります。ひとつ目は言語です。Appleは、文字起こしの提供状況は言語と国や地域によって異なると明記していて、対応言語の一覧に日本語は入っていません。ふたつ目は配信者の設定で、Spotifyは番組単位でもエピソード単位でも表示を切り替えられます。3つ目は音声の条件で、Appleは複数話者の発言が被さり合っている会話や大音量の音楽を含むエピソードは文字起こしが難しい場合がある、公開から24時間は待つ、Apple Podcast Connectのオーディオと文字起こしのセクションで警告が出ていないか確認する、と案内しています。
ポッドキャストの文字起こしをAIでできるツールは?
音声ファイルを受け取って話者付きのテキストを返せるものであれば、どれでも出発点になります。番組の運用で差が出るのは、話者ラベルを行ごとに持てるか、固有名詞を事前に登録できるか、そしてVTTとSRTの両方で書き出せるかの3点です。プラットフォームがVTTとSRTしか受け付けないので、そこを満たさないツールは提出前に変換の手間が入ります。ツールの選び方をもう少し広く見たい場合は文字起こしとはにまとめています。
まとめ
日本語のポッドキャストは、プラットフォームの自動文字起こしを待っても出てきません。原稿を作るのは配信者の仕事になります。ただしAppleが自分で「番組の説明にリンクを置いて届けてほしい」と案内している以上、これは回避策ではなく想定された運用です。
作業としては、音源を上げて、話者数を指定して、固有名詞を用語集に入れておく。あとは書き出し先を配信面とWebページで分けるだけです。2回目からは用語集が効いてくるので、手を動かす時間は目に見えて減ります。