「音声翻訳アプリ」で検索すると、Google翻訳のアプリストアページから個人向けの無料アプリ、多言語対応をうたう比較記事まで、性格の違うページが並びます。「音声を翻訳したい」という一言の中に、実はまったく違う3つの場面が混ざっているため、検索結果もそれに応じてばらけているのです。
目の前の相手とその場で会話を訳したいのか。すでに録音した動画や会議の音声を、あとで読めるテキストや字幕に変えたいのか。それとも、多言語の聴衆がいるイベントやセミナーで、参加者それぞれに字幕を届けたいのか。この3つは、求められる速さも、対応言語の考え方も、書き出せる形式も別物です。この記事では、場面ごとに実際のアプリを対応言語数・料金・オフライン対応で比較し、最後に比較表と選び方をまとめます。
なお、私は文中で紹介するサービスの一つ、AI音声文字起こし・字幕ツールのSubananaを運営しています。Subananaが向かない場面もそのまま書くので、判断材料にしてください。

すでに「録音・動画をあとで翻訳したい」場面だと分かっている方は、音声翻訳とは?録音・会議・動画の音声を翻訳する方法とツールの選び方で、2種類の音声翻訳の考え方をより詳しく整理しています。中国語の音声を日本語に翻訳したい場合は、話し言葉のニュアンスの残し方に特有の注意点があるため、中国語の音声を日本語に翻訳する方法で言語ペア特有のポイントをまとめています。

① その場の会話を訳したいとき
目の前の相手と、いま話しながら訳したい場面です。スピードが最優先で、話した内容をあとから直すことはほぼできません。
Google翻訳は無料で、マイクに話しかけるとその場で音声とテキストの両方に翻訳結果を出せます。言語パックをダウンロードしておけばオフラインでも使え、カメラをかざした看板やメニューの翻訳にも対応しています。公式サイトでも謳っている通り、対応言語の広さでは頭一つ抜けています。無料でどこまでできるかはGoogle翻訳の音声翻訳はどこまで使える?で詳しく解説しています。
VoiceTra(ボイストラ)は、情報通信研究機構(NICT)が提供する無料アプリです。多言語の旅行会話向けに作られた、国の研究機関が開発する無料アプリという立ち位置が特徴です。オフライン対応はありません。
ポケトークのような専用デバイスは、スマホを取り出しにくい接客や店頭の現場で選ばれています。専用マイクを内蔵した本体を渡すだけで通訳できる手軽さが強みですが、こちらもオフライン翻訳には対応していません。
無料で始めるならGoogle翻訳かVoiceTra、スマホを出さずに済ませたいならポケトークのような専用機、というのがこの場面での分け方です。
② 録音・動画の音声をあとで翻訳したいとき
すでにある会議・インタビュー・動画の音声を、別の言語で読めるテキストや字幕に変えたい場面です。会話翻訳とは逆に、時間をかけて正確さと読みやすさを詰められるのが特徴です。
Nottaは文字起こしと要約に強みを持つツールで、公式サイトによると58言語の文字起こし・翻訳に対応し、Zoom・Google Meet・Microsoft Teams・Webexの4プラットフォームに会議ボットが自動参加します。有料プランは年払いで月額1,185円から(プレミアムプラン、公式サイトの料金ページより)で、テキストの翻訳はこのプレミアムプラン以上で使える機能です。
Subananaは、対応する95以上の言語ごとに複数の音声認識モデルをベンチマークし、その時点で最も精度の高いモデルを自動で選ぶ設計です(1つのベンダーに固定されません)。字幕モードでは1つの動画から複数の翻訳先言語のSRTを一度に書き出せ、単一言語・バイリンガルどちらの字幕焼き込み動画もワンクリックで作成できます。社内用語や固有名詞が多い会議では、用語集や背景資料をアップロードして訳出の精度を上げられます。AI文字起こしツールから実際の画面を試せます。
一方で、会議ボットが自動参加できるのはGoogle MeetとMicrosoft Teamsの2つにとどまり、NottaのようにZoomやWebexには対応していません。Zoomの会議を扱う場合は、録画ファイルをアップロードするか、ブラウザ音声を録音するChrome拡張機能を使う流れになります。対応言語の広さと訳出の柔軟さで選ぶか、対応プラットフォームの多さで選ぶかが、この2つを比べるときの分かれ目です。
動画を複数言語の字幕にする具体的な手順は、音声・動画を多言語に翻訳する方法にまとめています。
③ 多言語のライブイベントで使いたいとき
話し手は一人〜数人、聞き手が多数という構図です。個々の参加者にヘッドセットを配るのは現実的でないことが多く、会話翻訳アプリでもカバーしにくい場面です。
大規模なイベント向けには、VoicePingのようなサービスがあります。ASPIC(一般社団法人ソフトウェア協会)の調査記事によると、1台のPCで2,000人以上の参加者に対応し、料金は月額3,750円からとされています。法廷通訳や外交など、一言の誤りが許されない場面では、AIではなく資格を持つ通訳者を使うのが原則で、WordlyやInterprefyのような、人の通訳者とAIを組み合わせたエンタープライズ向け同時通訳プラットフォームがこの領域をカバーしています。ただし料金は企業向けで、導入もそれなりに複雑です。
Subananaのライブ字幕・翻訳機能は、1つのセッションで元の言語に加えて最大5つの翻訳先言語を設定できます。参加者はアプリのインストールなしに、配布されたQRコードやリンクから自分の言語を1つ選んで閲覧します。課金は配信した音声の分数に応じた仕組みで、翻訳先の言語を増やしても消費量は変わりません。初回は誰でもクレジットカードなしで5分間無料で試せますが、本番でセッションを続けるにはMaxプランか追加クレジット・ストアバリュー残高が必要です。
一方で制約もあります。ライブセッションの文字起こしはその場では書き出せません。エクスポート機能自体が用意されていないため、イベント後に記録として残したい場合は、別途録音した音声ファイルを通常の文字起こしプロジェクトとしてアップロードし直す形になります(この場合はイベント中とは別に、あらためて文字起こし分の処理が発生します)。AIリアルタイム文字起こしのページで、設定できる項目を確認できます。
VoicePingのような数千人規模のイベント運用や、Wordly・Interprefyのような人の通訳者を含む体制が必要な場面では、Subananaより適したサービスがあります。大学の講義や社内のハイブリッド会議、国際色のあるセミナーのように、そもそも通訳者を置く予定がなかった場を手頃に多言語化したい、という場面がSubananaの得意な範囲です。運用の具体的な手順は多言語イベントのライブ字幕で解説しています。
比較表
| アプリ | 主な用途 | 対応言語数 | 料金の目安 | オフライン | 多人数のライブイベント |
|---|---|---|---|---|---|
| Google翻訳 | その場の会話・カメラ翻訳 | 公表数は未確認(業界最多クラス) | 無料 | 対応 | 不向き |
| VoiceTra | その場の会話(旅行向け) | 公表数は未確認 | 無料 | 非対応 | 不向き |
| ポケトーク | その場の会話(専用デバイス) | 公表数は未確認 | 非公開(要公式サイト確認) | 非対応 | 不向き |
| Notta | 録音・動画の文字起こし+翻訳 | 58言語 | 月額1,185円〜(年払い) | 非対応 | 不向き |
| Subanana | 録音・動画の翻訳/少人数〜中規模のライブ字幕 | 95言語以上 | 詳細は料金ページ | 非対応 | 1セッション最大5翻訳先 |
| VoicePing | 数千人規模のライブイベント | 45言語 | 月額3,750円〜 | 対応 | 2,000人以上 |
対応言語数・料金は、Notta・Subananaは各社公式サイト、VoicePingはASPIC(一般社団法人ソフトウェア協会)の調査記事(いずれも2026年9月時点)に基づいています。Google翻訳・VoiceTra・ポケトークの対応言語数は本記事執筆時点で公式の公表値を確認できなかったため空欄にしています。最新の条件は各サービスの公式ページでご確認ください。
どう選ぶか
- 相手が目の前にいて、いますぐ訳したい → 無料ならGoogle翻訳かVoiceTra、専用機がよければポケトーク
- 録音・動画・会議の音声を、あとで読めるテキストや字幕にしたい → NottaかSubanana。会議ボットの対応プラットフォームを重視するならNotta、対応言語数と字幕書き出しの柔軟さを重視するならSubanana
- 多言語の聴衆がいるイベント・セミナーで使いたい → 数千人規模ならVoicePingのような専業サービス、人の通訳者が必須ならWordly・Interprefyのようなプラットフォーム、通訳者を置く予定がなかった場を手頃に多言語化したいならSubananaのライブ字幕
よくある質問
音声翻訳の無料アプリでおすすめのものは?
その場の会話であれば、Google翻訳とVoiceTraがどちらも無料で使えます。Google翻訳はオフライン翻訳やカメラ翻訳にも対応し、VoiceTraはNICTが提供する旅行向けの無料アプリです。録音・動画の翻訳は、無料プランで試せる範囲はあっても、本格的に使うなら有料プランが前提になることが多くなります。
リアルタイム音声翻訳ができるアプリは?
1対1の会話ならGoogle翻訳・VoiceTra・ポケトークが定番です。参加者が多いイベントや会議になると、これらの会話翻訳アプリでは対応しきれず、Subananaのライブ字幕やVoicePingのような、多人数向けに設計されたサービスが必要になります。
音声で翻訳できる無料アプリは?
マイクに向かって話した内容をその場で翻訳したい場合は、Google翻訳の音声入力とVoiceTraが無料で使えます。どちらもその場の会話向けに作られたアプリで、録音済みの音声ファイルをまとめて翻訳する用途には向いていません。
喋る通訳アプリはありますか?
Google翻訳の会話モード、VoiceTra、ポケトークのような専用デバイスが、話した内容をその場で訳す「通訳アプリ」に近い使い方です。ただし法廷・医療同意・外交のように誤訳が許されない場面では、AIではなく資格を持つ人の通訳を使うのが原則です。
まとめ
「音声翻訳アプリ」を1つ決め打ちで探すと、場面に合わない選択をしがちです。その場の会話ならGoogle翻訳かVoiceTra、録音・動画の翻訳ならNottaかSubanana、多言語のライブイベントならVoicePingやSubananaのライブ字幕、法廷・外交レベルの精度が必要ならWordly・Interprefyのような通訳プラットフォーム。まず自分がどの場面にいるかを決めてから、アプリを選んでください。
録音・動画の翻訳やライブイベントでの利用を検討している方は、AI文字起こしツールから無料で試せます。