会議録音は、自分が参加している会議であれば一般的には違法ではありません。ただし録音データの扱いや社内規程は別問題です。この記事では法的な整理と、PC・スマホ・ICレコーダー・Web会議ツール・文字起こしツールでの録音方法、録音を議事録に変える手順を紹介します。
なお、後半の文字起こしツールの説明は、私が運営するSubanana(文字起こし・議事録サービス)を前提にしています。
会議を録音するのは違法?(一般的な整理)
結論から言うと、自分が参加している会議を録音すること自体は、一般的には違法ではありません。 これは「秘密録音」と呼ばれる行為で、最高裁の判断が示されています。
最高裁判所第二小法廷は平成12年7月12日の決定(詐欺被告事件、刑集54巻6号513頁)で、詐欺被害を疑った人が後日の証拠とするために相手との会話を無断で録音した事案について、次のように判示しています。
「このような場合に、一方の当事者が相手方との会話を録音することは、たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであっても、違法ではなく」
理由はこうです。浜松の弁護士・鈴木悠太氏の解説によれば、会話の中で話者は自分の意思で聞き手に言葉を投げかけており、録音の対象は「話者自らが聞き手に渡した情報」にあたります。だからプライバシー侵害の程度は低い、という整理です。会議に参加しているメンバーがその場の発言を録音する場合も、自分が会話の一方当事者である点は変わりません。
ただし、どんな会議でも録音していい、という話ではありません。 上の決定はあくまで「後日の証拠とするため」に録音した事案についての判断で、会議そのものの秘密性が高い場合には結論が変わり得ます。学校法人関東学院事件(東京高判平成28年5月19日)では、大学のハラスメント委員会の審議を無断で録音したデータについて、裁判所は訴訟上の信義則に反するとして証拠に採用しませんでした。人事・懲戒・ハラスメント調査など、参加者が「ここだけの話」を前提に発言する会議は、通常の業務会議とは分けて考えてください。
ここは「会議」と「盗聴」で話が変わります。 秘密録音と混同されやすいのが盗聴(自分が関与していない他人の会話や生活状況を録音する行為)です。同じ解説記事によれば、盗聴それ自体は日本の刑法上の犯罪ではないものの、盗聴のために他人の住居に侵入すれば住居侵入罪、盗聴器を仕掛けるために他人の家財を壊せば器物損壊罪など、付随する行為が別の犯罪に該当することがあり、民事上の損害賠償責任を問われるリスクも秘密録音より高いとされています。自分が参加している会議の録音と、無関係の第三者の会話を録音する盗聴は、法的な位置づけがまったく別物だと理解しておくのが安全です。
適法だからといって、何をしてもよいわけではありません。同じ解説記事は、秘密録音自体が適法でも、録音内容をみだりに第三者に漏らせば民法709条の不法行為や、場合によっては刑法230条1項の名誉毀損罪にあたり得ると指摘しています。会議の録音についても同じ発想が当てはまります。
- 第三者への公開・SNS投稿は別問題。 会議の録音を無断で社外に公開したり共有したりすると、プライバシー侵害や名誉毀損になり得ます。
- 録音データの管理。 会議には人事・取引条件など機微な内容が含まれることが多く、録音データは適切に保管し、不要になれば削除するのが安全です。
- 就業規則・社内規程は、法律とは別のハードルです。 弁護士法人長瀬総合法律事務所の解説によれば、使用者には就業規則に明文があるかどうかにかかわらず、職場の施設内での録音を禁止する権限があると考えられています。録音を明確に禁止されたあとも録音を続けた社員について、職務命令違反を認めた裁判例もあります(東京地立川支判平成30年3月28日)。録音そのものが適法でも、社内ルール違反として懲戒の対象になり得るということです。適法かどうかとは別に、まず自社のルールを確認してください。
この記事は一般的な法律解説であり、法的助言ではありません。 個別の会議や状況について判断が必要な場合は、弁護士に相談してください。
会議を録音する5つの方法
法的な整理がついたら、あとは自分の状況に合う録音方法を選ぶだけです。
1. PCの標準機能で録音する
Windowsには「サウンドレコーダー」(旧「ボイスレコーダー」)、MacにはQuickTime Playerや「ボイスメモ」が標準で入っており、追加のソフトなしでその場のマイク音声を録音できます。オンライン会議をPCで行っている場合、外部マイクなしでも内蔵マイクの音声を拾えるので、急に録音が必要になったときの最短ルートです。長時間の会議や複数人が離れた位置で話す会議では、内蔵マイクだけだと声を拾いきれないことがある点に注意してください。
2. スマホの標準アプリで録音する
iPhoneの「ボイスメモ」、Androidの標準録音アプリも同様に、対面の会議室にスマホを置いておくだけで録音できます。テーブルの中央に置く、発言者に近い位置に置くなど、置き場所を工夫すると聞き取りやすい録音になります。
3. ICレコーダーで録音する
対面の会議が多い、あるいは長時間・複数会議室で録音する機会が多いなら、専用のICレコーダーが向いています。バッテリー持ちや指向性マイクの精度はPC・スマホの内蔵マイクより優れていることが多く、議事録の精度はまず録音の音質で決まります。機種選びを含めて比較したい場合は、AIボイスレコーダー比較にまとめているので、そちらを参照してください。
4. Web会議ツールの標準録画機能を使う
Zoom・Teams・Google Meetなどのオンライン会議ツールには、標準の録画・録音機能が用意されています。ツールごとに開始できる権限や参加者への通知の仕組みが異なるため、実際の手順は使っているツールのページで確認するのが確実です。
5. 文字起こしツールで録音する
会議の目的が「あとで聞き返す」ではなく「発言を検索できる記録として残す」なら、録音と同時に文字起こしまで進められるツールを使う方法もあります。
SubananaにはGoogle MeetとMicrosoft Teams用の会議ボットがあります。カレンダーを連携しておくと、予定された会議を検知してボットが自動的に参加し、録音します。Zoomのボットは対応していませんが、Chrome拡張機能を使えばZoom会議の音声もキャプチャできます。
ボットは会議が終わったあとにプロジェクトを作成する仕組みです。会議中のリアルタイム字幕は提供していません。会議中にその場で字幕を出したい場合は、各ツールのライブキャプション機能を使ってください。
手元にすでにある録音ファイルなら、そのままアップロードできます。YouTube・Instagram・Facebookの公開URLを貼り付けて取り込むこともできます。
録音を議事録に変える段取り
録音ができても、それだけでは議事録になりません。発言の記録から、決定事項・保留事項・アクションアイテムを拾い出して整形する工程が必要です。Subananaでの流れは次のとおりです。

- 録音ファイルを用意します。 ここまでで紹介したPC・スマホ・ICレコーダー・Web会議ツールのいずれかで録音したファイル、またはカレンダー連携ボットが自動的に作った録音を使います。
- アップロードします。 音声・動画ファイルを直接アップロードするか、YouTube・Instagram・Facebookの公開URLを貼り付けます。
- 文字起こしと自動整形が行われます。 句読点や段落の区切りを自動で整える機能は常にオンになっており、オフに切り替える設定はありません。読み返しやすい文字起こしを前提に、そこから決定事項とアクションアイテムをAIが要約として抜き出します。担当者や期限は、会議中に実際に発言されていればテキストとして拾われますが、タスク管理ツールに自動登録される機能ではなく、あくまで要約文の一部です。
- 固有名詞を整えます。 社内プロジェクト名や製品名など辞書にない言葉が多い会議では、用語集(ワークスペース全体に効くリストと、個別プロジェクトに付けるリストの両方に対応)に登録しておくと、議事録の中でも正しい表記で出てきます。
- 確認して書き出します。 文字起こしと要約はエクスポートできます(無料プランではこのエクスポート機能自体が使えず、透かし入り動画の書き出しのみが可能です。書き出し機能は有料プランで使えます)。金額や合意事項など重要な内容は、原音声と照らし合わせて確認することをおすすめします。
会議前の準備からまとめてやりたい場合は、会議アジェンダテンプレートで議題を整理してから録音に臨むと、あとの要約もぶれにくくなります。ツールを一通り比較したい場合は、AI 議事録 会議 文字起こしツールのページで対応ツール・翻訳・用語登録・利用条件を確認できます。
よくある質問
会議を録音するのは違法ですか?
自分がその会議に参加しているなら、一般的には違法ではありません。最高裁判所第二小法廷は平成12年7月12日の決定(刑集54巻6号513頁)で、後日の証拠とするため相手の同意を得ずに会話を録音した事案について「違法ではなく」と判示しています。会議の参加者も会話の一方当事者である点は同じです。ただし、録音した内容を無断で第三者に公開すればプライバシー侵害や名誉毀損の問題になり得ますし、就業規則や施設管理権で録音自体が制限されている場合もあります。秘密性の高い会議では、無断録音が訴訟上の信義則に反するとして証拠に採用されなかった例もあります。これは一般的な法律解説であり、法的助言ではありません。個別の状況は弁護士に確認してください。
会議の録音はできますか?
できます。会議室にPCやスマホ、ICレコーダーを置いて録音する方法のほか、Zoom・Teams・Google Meetなど使っているWeb会議ツールの標準録画機能を使う方法、カレンダー連携ボットに自動で録音・文字起こしまで任せる方法があります。上の「会議を録音する5つの方法」で、それぞれ向いているケースをまとめています。
話し合いをこっそり録音していいですか?
自分がその話し合いに参加しているなら、一般的には違法にはなりにくいというのが法律解説の整理です(前述の最高裁決定)。ただし「違法になりにくい」は「やって問題ない」とは違います。
注意点は3つあります。第一に、これは「録音していいか」の話であって、「録音した内容をどう扱ってもいいか」とは別問題です。第三者への漏洩やSNSへの投稿は別のリスクを伴います。第二に、職場では就業規則や施設管理権を根拠に録音が禁止されていることがあり、その場合は適法でも懲戒の対象になり得ます。第三に、ハラスメント委員会の審議のように秘密性の高い会議を無断録音したケースでは、裁判所が証拠として採用しなかった例もあります(東京高判平成28年5月19日)。判断に迷う場合は弁護士に確認してください。
Teams会議をこっそり録音できますか?
Teamsには、参加者がミュート解除やカメラオンの前に録音への同意を求められる「記録には参加者の同意を要求する」という管理者ポリシーがあり、同意の結果は会議出席レポートに記録されます。この設定が有効になっているかどうかは組織のTeams管理者次第で、すべての組織で同じ挙動になるとは限りません。標準の録画・文字起こし機能を使わずに画面録画などで記録する場合は、Teams本体の通知の仕組みに頼れないため、会議の冒頭で記録する旨を伝えておくのが安全です。Teamsでの録音方法をより詳しく知りたい場合は、Teams会議の録音方法で手順と通知の仕組みを解説しています。
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まとめ
会議の録音は、自分が参加している会議であれば一般的には違法ではありません。ただし注意点は2つあります。録音した内容の扱い方(公開・共有・保管)と、就業規則などの社内ルールです。どちらも「適法かどうか」とは別の話として確認してください。録音方法はPC・スマホ・ICレコーダー・Web会議ツール・文字起こしツールのいずれでも構いません。決め手になるのは、録音したあとにその内容をどれだけ早く「誰が何を決めたか」がわかる議事録にできるかです。